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いま多用されるキイワードは、どちらかといえば「能力」より「業績」である。
たとえば残業を拒まない「生活態度」の重視などが少なくとも表面上は影をひそめたのも、その一側面であろう。
そのぶん評価は「非人格的」になって、条件によってはサラリーマンが自由感を享受できる余地が少しひろがるかもしれない。
しかしもちろん、このシフトはサラリーマンの自由のためなどではない。
なによりもそれは、もう一度いえば、能力が年功とまぎらわしく能力と実績の直結性が見えにくい、言いかえれば工場でのような作業管理がまだ確立されていないホワイトカラーの働き方が、現段階の日本的経営の主たる鍬入れの対象だからである。
とはいえ、グループAの賃金の基本形がなお職能資格給にすえられていることからもわかるように、日本企業の能力主義が、業績主義に完全に移ることはないだろう。
集団作業の生産労働者、一般の事務職、キャリア展開型のホワイトカラーなど従業員の多数については業績の客観的な基準を得ることがむつかしいというばかりではない。
実績にかたよった評価は、必然的に個人の職務領域の明瞭化を要求し、職務割当てと配置において要請されるフレキシビリティへの適応という日本企業に特有のつよみを危うくしかねないからだ。
能率給(象限1の賃金)をとれば、不慣れな職務に変わると賃金収入が減少するゆえに、労働者はむしろ「その経験をひろげたがらない」という観測もある(K1993)。
そのうえ、これまでもそうであったように、作業管理が厳格でさえあれば、工場・事務所を問わず、たいていの会社業務に不可欠のチームワークを守りながらフレキシブルな能力を競う労働者を個人別に処遇することは十分に可能なのである。
こうして日本型の特徴は、その基幹部分で維持されるといえよう。
このことからもう一つの推測もできる。
日本の経営者はおそらく、従業員の中心部分については、職務範囲の確定やジョブーディスクリプション(職務の内容記述)にもとづく非人格的な支払いが必要であるとは考えてはいない。
顕在能力の評価への移行は主張しても、それはあくまで個人的に格差のつく、象限1に属するシステムの導入である。
プロフェッショナリテイの発揮は勧めても、「仕事の類型(化)というのも非常に難しい。
4万人いたら4万個の仕事があると言っても過言ではない。
ですから従業員一人ひとりが自分の仕事にプロフェツショナリテイを見出してがんばってもらえればいいのですが」(松下電器人事部次長、福島伸一氏の言葉。
『国際経済労働研究』1996)という次第なのだ。
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